ギター塗装繁忙期

2022年11月からギターのリフィニッシュの依頼が多くなり、ピーク時にはお陰様で10本にもなりました。特にレスポールのサンバーストが多く、これもブログに掲載して記事の影響ではないかと思います。改めてありがとうございます。そしてこの繁忙期にご依頼されて納期の遅れが出て大変申し訳ございませんでした。ご依頼のイメージどおりに仕上げる為でもありました。今後も妥協を許さず努力していきますので、よろしくお願いいたします。

下の写真はリフィニッシュ完了待ちのケースです。

リフィニッシュ完了待ちのケース達

消さないシリアルナンバースタンプ

ギブソンのカスタムショップ製ビンテージタイプのギターは大体シリアルナンバーをスタンプで打って、その上にクリアー塗装をしています。リフィニッシュの場合前の塗装を剥がしますが、その際サンディングをしますとシリアルナンバーが消えてしまいます。これを消さないで残せます。

シリアルナンバー

ご依頼のギターは、オールブラックのスタンダードで、ヘッドの表とトップのみブラックを残しそれ以外をナチュラルにするリフィニッシュです。ヘッド裏のシリアルナンバーはホワイトスタンプです。まずシリアルナンバー周りの塗装を剥がします。できるだけ数字の際まで削ります。

シリアルナンバー残し

目止めを塗った後、シリアルナンバーの数字だけ盛り上がっていますので、段差が無くなるまでサンジングシーラーを吹いてはサンディングしてを繰り返して、平坦にします。

サンジングシーラー吹き

その後は、クリアーラッカーを重ねて、磨いて出来上がりです。今回はナチュラルカラーで、シースルー系カラーでしたらシリアルナンバーは残せますが、潰しのカラーにリフィニッシュだと残念ながら消えてしまいます。

クリアーラッカー吹き

ネックアイロン修正のご依頼

最近「トラスロッドを締め切っても、まだネックが反っている」、「トラスロッドが無く調整できないギターで反っている」などのネックに関するお困りの方からのご依頼が多いです。今まで何度か当工房のブログでネックアイロンの記事を載っけてからすごく増えていますね。ネックが順反りの場合10フレットあたりで、弦とフレットの距離が空いて弾きづらくなります。いわゆる弦高が高くなりますので、だいたいの方はブリッジのサドルを下げて弦高を低くします。このやり方ですと、10フレットの弦とフレットの距離は短くなりますが、最終フレットの弦とフレットの距離は10フレットあたりの距離より低くなるので、12フレットあたりから17フレットあたりまでで、ビビったりチョーキングをすると音がつまってサスティーンが無くなったりします。トラスロッド調整で反りが直らない場合は、曲った木をネックアイロンを使い強制的に熱を加えて逆に曲げて固めていきます。何日か経ってネックアイロンを外すと圧がなくなり多少戻りがあるので、そのことも計算に入れてやります。

写真は今までのネックの反りにネックアイロンで修理した実例の中のほんの一部です。実際にはこれ以上ありますが、順反り、逆反り、1弦側と6弦側の反り方が違うねじれ、ボディの付け根から曲がる元起き、とネックにはいろいろと不具合があります。このような状態がおきても決して諦めないでください。直りますというより、直します。

ネックアイロン

究極のヴィンテージ・サンバースト塗装

最近では、メールでのお問い合わせも増え、大体はメールのやり取りで、遠方から修理やカスタマイズや塗装の楽器が送られてきます。中には北海道からのお客様もいます。で、今回のご依頼も遠方からのお客様で、1回足を運んでいただきご来店してご依頼内容を話していただきました。大変ありがたい限りです。ご依頼内容は、トップのみのリフィニッシュ、エイジド加工、ウエザーチェックを入れるという内容です。送られてきたギターは以前リフィニッシュ、エイジド加工、ウエザーチェックを入れてもらったギターみたいなのですが、色が明るすぎてあまり気に入っていなかったようです。この写真の感じも悪くは無いのですが、お客様の理想のカラーがあったのです。

Before

その理想のカラーは、The Beauty Of The Burstの本に載っているこのカラーです。ウー渋いですね〜。わかりました、このカラーや雰囲気に近づけてみます。

見本写真

この見本のギターは’59なので、本の出版の時期からすると50年ぐらいは経っています。しかも綺麗で状態が良いので、自然の劣化だけでここまで保たれているのではないかと思います。自然の焼けや変色も考えて調色していきます。虎木の模様部分は濃いオレンジに近い茶色なので、生地に調色したステインをすり込んで行きます。

調色したオレンジステイン塗り込み

乾いたらサンディングをして表面だけ色を取ります。すると虎の模様部分だけ色が残ります。

サンディング

次に黄色のステインを混ぜたシーラーを塗ります。これで、虎の模様がはっきりしてきます。

シーラーに顔料イエローを混ぜスプレー

次に茶色ステインでバーストを吹いて行きます。見本のバーストをイメージして吹きました。ヴィンテージぽさを出す為と、ボディサイドとバックとネックはすでに光沢があまり無かったので、トップコートのクリアーは半艶けしを選びました。

バースト、トップコート塗装

ウエザーチェックは、カッターでの横スジと急冷のランダムなひび割れをブレンド。傷などのエイジド加工は、あまりヘビーに入れなくライトな感じで入れました。

エイジド処理&ウエザーチェック施工

The Beauty Of The Burst完成です。イメージ通りにできご依頼のお客様も喜んでいただきました。ご依頼いただきありがとうございました。

究極のヴィンテージ・サンバースト完成

ギターキット塗装〜組み上げ

今回は、ギターキット仕上げまでのご依頼です。ボディ、ネック、指板フレット、バインディングが付いて形になっている未塗装の状態で送られてきました。パーツも一緒に届いたので塗装前に合わせてみましたが、ペグ、ジャック、ポットの径が合わない為塗装をする前に、穴を広げました。この未塗装のギターは、中国製で、やはり荒削りなので、表面を#320でサンディングします。これをしておかないと、仕上がりに影響がでます。

木部サンディングしてマスキング

指板にマスキングをして、目止めをして、今回はウレタンのサンディングシーラーから吹きます。乾いたらサンディングしてを何回か繰り返して表面の凹凸がなくなったら、クリアーにピュアイエローを混ぜ吹きます。

ウレタン・クリアーイエロー塗装

トップのサンバーストは、オレンジ系の茶色を作り吹きます。

調色したブラウンサンバースト塗装

ボディ・サイド、ボディ・バック、ネック、ヘッド裏も同じ色で吹きます。ボディとネックの材質が違う為、色が微妙に違うように見えます。

サイド・バック・ネックも調色したブラウンに塗装

塗装を乾燥させて、磨きにかかります。磨いて綺麗になったら、フレットは初めからガタガタでボコボコでしたので、擦り合わせもします。パーツを組み込み調整をして出来上がりです。これで、半分は日本製になりました。

完成

ヴィンテージ・レイクプラシッドブルー塗装

ポリウレタン塗装からラッカーのヴィンテージ・レイクプラシッドブルーにリフィニッシュです。ポリウレタン塗装は、硬く厚く頑固ですので剥がすのにいつも苦労します。

Before

今回は6弦ベースでボディ塗装する為の持ち手治具が無かったので、新しく作りました。

6弦ベース用の塗装用治具製作

専用持ち手を装着した写真がしたです。

ポリウレタン塗装剥がし

木がアッシュなので、ワイピング材を塗っては拭き取り塗っては拭き取りを繰り返して導管を埋めます。これをしないと仕上がりが凹凸になってしまいます。導管が埋まり乾燥したら軽くペーパーをかけ、次にメタリック系を塗装するので、木目を完全に隠蔽する為白のサフェーサーを吹きます。

下地塗装

よくレイクプラシッドブルーブルーの塗料を探している人がいますが、この色は作らないと無いでしょう。メタリックにキャンディーカラーのブルーを混ぜます。キャンディーカラーのブルーでも何種類か有りますが、今回はお客様の要望でピュアブルーを選択しました。

メタリックブルー(調合したレイクプラシッドブルー)塗装

ヴィンテージ感のある褪色した色にしたい為、調色した飴色クリアーを吹きます。そうすると少し緑がかった色になります。あとは、トップコートにクリアーを重ねて出来上がり。

調色した飴色ステインクリアー塗装
完成

マルチレイヤー塗装エイジド加工

最近ちまたで流行りのマルチレイヤー塗装にリフィニッシュの依頼が来ました。塗装後はエイジド加工をしてVintage風に仕上げてほしいとのことで、スタートです。

マルチレイヤーとは、出来上がったカラーの上から重ねて違うカラーを塗るやり方です。昔、F社で塗装の不良や、木目が悪いなどの理由でそういったギターが存在していたみたいです。塗装のやり直しは、一回塗装を剥がさないとならないので、マルチレイヤーにした方が、効率が良く早いです。新品のギターの出来あがりはマルチレイヤーなのかはわからないが、使っていくうちに塗装が剥がれて初めて中のカラーが顔を出して分かります。最近流行りのマルチレイヤーは、はじめから中のカラーを見せるお洒落な感じを出しています。それを出すバランスや量は施す人のセンスにかかってると思います。

Before
表面を研磨
下地処理後イエロー外側ブラックと内側オレンジでその上にラッカークリア塗装
サンバーストの上にラッカーホワイト塗装
クリームカラー塗装
エイジド加工表
エイジド加工裏
マルチレイヤー・エイジド完成

ヴィンテージ・サーフグリーン

ボロボロなSuhrのギターを生まれ変えさせるプロジェクトです。缶スプレーで塗りたぐったギターが持ち込まれました。はっきり言ってお見せできないような、可哀想な状態でした。これをボディとネック共にオールラッカーフィニッシュで塗装。カラーはいろいろと悩んだ末、ヴィンテージ・サーフグリーンに決定。サーフグリーンといえば、ジェフベックのギターの色が思い浮かびますが、もう少し薄いグリーンで古っぽい感じにして欲しいとご依頼主様から要望を受けました。いろいろと調色してまずはサンプル作りから始めます。

Vintage Surf Green

ヴィンテージ風ということで、カラーベースの上に飴色クリアーを吹きます。こうすることにより見る角度で黄色っぽく見えたりします。ご依頼主様と了解を得てこのカラーでいきます。

ギター本体に移り、ボディ、ネック共に元々の塗装を剥がしていきます。剥離剤を使わず、サンディングのみで平になるように削っていきます。ネックのヘッドには大事なSuhrというロゴがありますので、そこだけを避けて荒い目のペーパーから#320まで使います。

#320サンディング後

生地が綺麗になったら、シーラーを吹いて塗料の木への吸い込みを防ぎます。次にサフェーサーを吹いて木目が出ないように消していきます。何回か吹いて表面が平らになるように研磨します。これで下地が完成。これまでで表面が平らでないとこれから上に重ねていく塗装に影響が出てしまうからです。

サフェーサー吹

次に調色をしたサーフグリーンを吹いていきます。サーフグリーンは綺麗ですね!

サーフグリーン
body&neck

次にそのボディのサーフグリーンの上とネックに飴色に調色したクリアーラッカーを吹くとヴィンテージ感が出ていい感じになります。

Vintage Surf Green

あとは、磨いてパーツを組んで、ネックをセットして調整をして完成です。あんなにボロボロだったSuhrギターが生まれ変わってよかったです。ご依頼されたお客様にも見違えるように変わった姿にびっくりして喜ばれていました。

ネック元起きネックアイロン

元起きとは、アコースティックギターによく見られ、ネックの付け根(ボディとネックが接合している部分)からくの字に純反りしていることを言い、12フレット付近の弦高が高くなります。この状態ですと、トラスロッドの調整では直らないです。そんな時にネックアイロンの出番です。アコースティックの元起きの場合はエレキギターの時と違うクランプを使います。

ネック元起き修理

締めるトルクや温度と時間は、そのギターの状況によって調整します。

弦を張りっぱなしにして、そのまま放置状態にしているギターが比較的にネックの元起きが起こりやすいみたいです。このようなことが起きましたら、ご相談ください。

ミニハム用ピックガード製作

ラージピックガードのSG Classicは、元々ピックアップがP-90タイプなので、これをよりパワーがあって音抜けが良いミニハムバッカーに交換のご依頼が来ました。ご依頼者はファイヤーバードのようなサウンドが好みのようで、マホガニーにミニハムバッカーなのでまさしくそのサウンドは出せると思います。(違いは形とリバースのファイヤーバードがスルーネック)

で、SGのミニハム用ラージピックガードを探しましたが有りません。なので、型から製作することにしました。P-90よりミニハムバッカーの方が小さいので、ボディのザグリ加工は無しで行けます。まずはルーターのガイドになるMDFボードで型を作ります。

ピックガードの型

ピックガードの型にピックガードの材料を両面テープで貼り、型より少し大きめにカットします。

ルーターテーブル

ルーター用ベアリング付ガイドビットを使い、ルーターテーブルの上でピックガードをカットしていきます。ルータービットはかなり高速に回って削って行きますので、危険です。

ピックガード面取り

周りの面取りが終わりピックガードの形になりました。後はブリッジポストとピックアップスクリューとピックガード止めスクリューの穴を開けます。

左オーダーピックガード右オリジナル

ピックガードを型から剥がして出来上がり。

SG mini hum

出来上がってサウンドチェックをしましたが、まさしくファイヤーバードサウンドで、ミドルから上が気持ち良く抜けてドライブします。